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野球治療・野球肩のスポーツ障害の診断へのアプローチ

2013.09.19 | Category: 投球障害治療

野球肩

肩関節

肩のスポーツ障害には多くの病態が存在し、来院時の訴えも痛み・不安定感・運動制限など様々です。
その原因も脱臼や骨折のように明らかな大外傷によるものから、オーバーユースを基盤としたものまで様々です。

 

肩関節の安定化機構

関節上腕靭帯
肩関節の静的安定性の多くは関節上腕靭帯が担っています。
上前方には上関節上腕靭帯(SGHL)、中前方には中関節上腕靭帯(MGHL)、下方部には下関節上腕靭帯(IGHL)前方部は前下関節上腕靭帯(AIGHL)、後方部には後下関節上腕靭帯(PIGHL)、下方部は液窩嚢と呼ばれています。

 

また、腱板筋(肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋)や上腕二頭筋長頭腱といった肩関節の安定化筋、それに肩甲骨周囲筋が動的要素として重要で、4つの腱板筋(インナーマッスル)はお互いに協調して収縮する。
さらに、関節窩、骨頭間に剪断力を生じさせる大胸筋、三角筋、広背筋など(アウターマッスル)や肩甲骨安定化筋群とも強調して収縮することで、常に骨頭を関節窩の安定した位置に保つように調節し、これらの静的要素と動的要素の協調により、初めて肩関節の安定化機構が成立します。

診断へのアプローチ

①病歴の聴取

的確に病歴(受傷機転)を聴取することが重要になり、投球障害肩でも「ある1球から痛くなった」ということがあります。
その場合には微細外傷の反復や慢性炎症を考えるよりも、腱板損傷・亜脱臼・関節唇損傷などを考えるべきで、受傷肢位についてもよく問診しなくてはなりません。

②身体所見

視診、触診、圧痛部位、関節可動域、クリック、有痛弧兆候(Painful arc sign)、インピンジメントサイン、筋抵抗テスト、関節弛緩性などを評価します。

 

筋抵抗テストは筋肉に負荷をかけ、痛みの誘発と筋力の評価を行うもので、腱板筋では棘上筋、棘下筋テストがあります。

 

関節弛緩性(laxity)とは各個体が生まれ持ったもので、不安定性(instability)とは異なり、弛緩性の程度は前後方向へのロード・アンド・シフトテストと下方へのサルカステストで評価し、その方向と程度、さらに肢位は治療方針の決定において非常に重要になります。

 

投球障害肩

投球障害肩とは投球を障害する病変をもっている肩の総称(症候群)であり、投球時のみに痛みを感じるものから、安静時でさえも痛みを感じるものまで、また損傷が不可逆的な変化に至ったものまで様々です。
1回の投球で大きな損傷を起こすこともありますが、多くは微細外傷の繰り返しやオーバーユースによって生じる炎症・変性が原因となります。
微細な損傷でも莫大な負荷が速いスピードで加わるため症状を発現し、投球期間が増えるに伴い単独病変は減少し、随伴病変を有するものの割合が増加してきます。

 

肩インピンジメント症候群、腱板炎

投球動作の反復などによって、滑液包が炎症を繰り返し肥厚・癒着を起こすと十分に滑動できなくなります。
一方、腱板は充血・浮腫・断裂を生じ、その結果、挙上時のひっかかり感・疼痛といったインピンジメント症状を呈してきます。

 

インピンジメント症候群の診断は臨床的に行われますが、不安定症によって引き起こされた滑液包炎や腱板炎、腱板損傷による二次的なインピンジメント症状も多く、関節内にも損傷が及んでいる可能性も念頭におき対処に注意が必要で、一般にインピンジメント症候群には保存療法が適用されます。

 

不可逆的な器質的変化が生じ保存療法が反応しない場合には(鏡視下)肩峰下除圧術が亜粉われます。

 

腱板損傷

腱板が機能しないと骨頭は求心性を保てなくなり、滑液包へのストレスが増強されます。
また、腱板が牽引・伸張されたり摩擦や圧迫を受けたりすると組織の変性や血行障害が加味され、さまざまな程度の断裂を起こしてきます。
腱板断裂に対しては鏡視下に肩峰下除圧術を行った後、三角筋付着部を剥離することなく直視下に断裂部を修復する術式が行われています。

近年、腱板修復も含めすべての操作を関節鏡下で行う術式、すなわち関節鏡下腱板修復術(ARCR:Arthroscopc Rotator Cuff Repair)がはじめられ、ARCRはスポーツ障害に多い不全断裂に特に有効と言われています。

 

関節唇損傷

関節唇の損傷は大きく2つに分けられます。
1つは複合体全体が一体となって関節窩縁の付着部から剥離するもの(付着部断裂型)、もう一つはフラップ状又はバケツ上状に関節唇の一部が断裂するもの(単独断裂型)になります。

①上方関節唇付着部断裂

上腕二頭筋長頭腱-関節唇複合体(BLC:Biceps/Labrum Complex)が関節窩側から剥離した病変です。
SnyderのSLAP損傷分類ではタイプ2にあたります。
上方関節唇は上腕二頭筋長頭腱・SGHL・MGHLの付着部であるため、BLCの剥離によってそれらの安定化要素が機能不全に陥り、つまり、微小な不安定性が生じるわけです。

 

これがスポーツ滑動時の肩の痛みの原因になることが注目され、最近では”前上方コーナー損傷”という新しい概念として提唱されています。
二頭筋長頭腱及び付着靭帯の機能の再建を考えると、とりわけ若年者のスポーツ障害肩においては解剖学的修復が必要となります。

②その他

単独損傷は少なく、ほとんどは不安定性による二次的損傷になります。
まれにバケツ柄状断裂を生じた関節唇がロッキングを示すことがあります。

 

 

引用・索引アスレティックトレーナー教本


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