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高所トレーニング順応までの低圧/低酸素環境での生理応答

2014.12.16 | Category: トレーニング

高度の上昇と人間の身体

 

人類の多くは、海面レベルに近い低地に定住しています。

 

言い換えると、ほぼ1気圧の環境下に適応して生存しています。

 

このような人が高い山に登れば、気圧の低下(低圧)や、それに伴う酸素分圧の低下(低酸素)に曝され、反対に、水中に潜る場合には、高圧や高酸素の環境に曝されます。

 

このような気圧や酸素分圧の変化に対して、人体は耐えたり、順応したりする仕組みを備え、そして、それがうまく機能すれば、8848mのエベレスト山頂(約0.3気圧の低圧低酸素環境)に、酸素ボンベを使わずに登頂することができます。

 

また、深度100m以上の水中(10気圧以上の高圧高酸素環境)に、酸素ボンベを使わずに潜ることも可能になります。

 

一方、そのような仕組みがうまく働かない場合には高山病や潜水病といった障害が起こり、死亡する危険もあります。

 

特殊環境と人間

 

特殊環境を人間の身体能力を改善するための刺激として活用する試みも行われており、その代表例が「高所トレーニングになります。

 

また、最近では、低圧/低酸素環境を利用し一般人の健康増進を図ったり、高圧/高酸素環境を利用した医療やコンディショニングも行われています。

 

高所では、大気の酸素分圧が低下します。

 

この影響を受けて、高度に応じて体内は低酸素状態(hypoxia)となります。

高所環境

高所で有酸素的な運動を行った場合、最大酸素摂取量(VO2max)や最大作業能力は低下します。

 

また、高度が上昇しても、同じ強度の運動をするための酸素需要量は変わらないという性質があるために、最大下運動時の相対的な強度は上昇することになります。

 

高所の最大酸素摂取量

順応

高所に滞在した場合、低酸素環境に対して人体は様々な順応(accli-matization)をしようとします。

 

その代表的なものが換気の亢進と造血になります。

 

亢進

亢進とは、高所に到着後ただちに起こり、当座の酸素不足を解消しようとし、この反応には、末梢の化学受容体(頸動脈体)が関わっています。

 

造血

一方、造血の順応には3週間程度をかけて徐々に起こります。

 

この反応には低酸素誘導因子(HIF-1)と呼ばれる転写因子が、造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)を分泌させるような遺伝子誘導を行い赤血球を増やします。

 

障害

高所に到着後、換気亢進を始めとした順応がうまく機能しなかったり、十分に追いつかない場合には、その数時間後に急性高山病(acute mountain sickness:AMS)が起こります。

 

これは頭痛を中心として、吐き気、めまい、疲労感などを伴う症状になります。

 

AMSは、普通の人で2,500m以上で起こり、人によって1,500mくらいから起こることもあります。

 

また、3,500m以上に急速に到達した場合にはほとんどの人で起こります。

 

AMSは通常数日で消失しますが、時には悪化して高所性肺水腫に発展し、死亡することもあります。

 

低酸素環境では肺の血管が収縮し、肺動脈圧が上昇します(肺動脈高血圧)。

 

この影響で、肺胞内に体液がしみ出して貯まり、水に溺れたのと同様、呼吸が出来なくなる症状(HAPE)が高所性肺水腫になります。

 

これは4,000m前後の高度で多発し、中高年や女性よりむしろ若い男性に多く発症します。

 

この他にも、脳内の水分のバランスが崩れて起こる高所性脳浮腫も生命を脅かす重篤な高山病の一つになります。

 

引用・索引 スポーツ・運動生理学概説

 


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