MENU TEL

ホーム > Blog > 2014 10月の記事一覧

2014 10月の記事一覧

無酸素性エネルギー産生(酸素が無い状況でもATPを合成でき、瞬間的に爆発的なエネルギーを供給できるのは無酸素性エネルギー供給機構によるもの)

2014.10.31 | Category: トレーニング

無酸素性エネルギー産生

 

軽強度の運動であれば、ATPの再合成に必要なエネルギーは、酸素で食物から得たエネルギー源を酸化してまかないます。

 

しかし、呼吸を止めても数十秒の全力疾走が可能にもなり、これは酸素が無い状況でもATPを合成できるからになり、瞬間的に爆発的なエネルギーを供給できるのは無酸素性エネルギー供給機構によるものです。

 

このように無酸素性にATPを再合成できる仕組みには非乳酸性機構と乳酸性機構の2つの機構があります。

 

①非乳酸性機構(ATP-CP系)

 

骨格筋にはATP以外にクレアチンリン酸(creatine phospate:CP)という高エネルギーリン酸化合物があります。

 

その量はATPの約3~5倍になり、ATPが分解されると即座にCPが分解しATPを再合成するエネルギーを供給します。

 

運動開始とともにCPの分解が起こり、数秒でCP量は著しく低下します。

 

6~8秒の全力疾走でまかなわれるエネルギー産生機構になります。

 

 

②乳酸性機構

 

無酸素性に糖(グリコーゲンやグルコース)を分解してATPを再合成する過程を「解糖」といい、糖から数十段階の化学反応を経てATPを再合成するエネルギーを得ます。

 

解糖の最終代謝産物が乳酸であるために乳酸性機構と呼ばれます。

 

身体は食物から摂取した糖(エネルギーが豊富に含まれている)を肝臓と骨格筋にグリコーゲン(グルコースが特殊なつなぎになっている)として貯蔵しています。

 

※血中にはグルコースが存在しますが、これは食物の消化吸収したものと肝臓のグリコーゲンが分解されたものになります。

 

骨格筋は貯蔵しているグリコーゲンや血中のグルコースを利用して無酸素状態でも乳酸性機構により即座にATPを再合成できるので、爆発的なエネルギーを必要とする運動を数十秒間続けることができます。

 

 

 

乳酸性機構は非乳酸性機構よりかなり複雑で、筋収縮でATPが分解すると骨格筋内に貯蔵されているグリコーゲンが分解、また、血中から取り込まれたグルコースがグルコース6リン酸になります。

 

グルコース6リン酸が分解され、ピルビン酸を経て乳酸になる過程でATPの再合成に必要なエネルギーが供給されます。

 

※無酸素性運動ではグリセルアルデヒド-3-リン酸から1,3ビスグリセリン酸に変化するときにNADという補酵素に水素を受け渡す必要があり、解糖系ではピルビン酸にまで分解される過程でATPの再合成が行われますが、、ピルビン酸から乳酸に変化するにはNADHから水素を抜き取りNADに戻さなければ解糖が進まないからになります。

 

グルコース6リン酸からピルビン酸にまで分解される過程で1モルのグルコース6リン酸から3モルのATPが産生されます。

 

※ただし、グルコースはグルコース6リン酸になる過程でATPを消耗するので、1モルのグルコースからは解糖で2モルのATPが産生されます(一方、グリコーゲンはグルコース6リン酸に分解されるときにATPの消耗はないので、3モルのATPが産生されます)。

 

③ピルビン酸

 

400mを全力で走るような激しい運動をすると、乳酸性機構の動員で乳酸が安静時に比べて25倍ほど蓄積します。

 

乳酸が蓄積すると水素イオン(H+)を解離し(乳酸CH3CH(OH)COOH→CH3CH(OH)COO+H+)、この際、水素イオンが過剰に蓄積し、筋肉は酸性に傾きます。

 

※実際に筋内のPHは安静時の7.0から激しい運動時には6.4まで下がります。

 

ホスホフルクトキナーゼ

 

水素イオンは解糖のスピードを制御している酵素(律速酵素)であるホスホフルクトキナーゼ(phosphofructkinase:PFKフルクトース6リン酸からフルクトース1,6リン酸の反応を触媒する)を阻害し、解糖できるエネルギー供給が抑制されてしまいます。

 

 

※水素イオンはさらに筋収縮を直接阻害します(水素イオンは筋小胞体のカルシウム結合能力を増強するために、筋小胞体からCa2+の放出量が減少し、加えてアクチンとミオシンの連結を阻害する)。

 

激しい運動にて蓄積する乳酸そのものが害ではなく、解離する水素イオンによって疲労が起こります。

 

しかし、筋肉内あるいは血中には過剰に水素イオンが蓄積し酸性に傾くのを防ぐ機構があり、それを「緩衝」といいます。

 

血中に存在する重炭酸イオン(HCO3-)は、乳酸から水素イオン(H+)が解離すると次のように反応し、水素イオン濃度を下げます。

 

HCO3+ + H+ → H2O + CO2

 

陸上競技の400m、水泳の100mなどで高いパフォーマンスを発揮できる一流選手は緩衝能力は高いといえます。

引用・索引 スポーツ・運動生理学概説

筋収縮とエネルギー産生(歩行のような軽運動でも安静時の3~5倍、ジャンプやダッシュ運動では瞬間的に数十倍のエネルギーを必要とする)

2014.10.30 | Category: トレーナー,トレーニング,ブログ

1.筋収縮とエネルギー産生

 

筋収縮には莫大なエネルギーが必要になります。

 

歩行のような軽運動でも安静時の3~5倍、ジャンプやダッシュ運動では瞬間的に数十倍のエネルギーを必要としていますが、これらのエネルギーはすべて「アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)という高エネルギー結合を持つ物質でまかなわれています。

 

 

ATPはアデニール基に3つのリン酸が結合しており、リン酸どうしの結合に高エネルギーが含まれています。

 

このATPがアデノシン二リン酸(adenosine diphosphate:ADP)に分解するときにエネルギーが生まれます。

 

※さらにADPからアデノシン一リン酸(adenosine monophosphate:AMP)に分解するときもエネルギーが供給され、このエネルギーはADPからATPに再合成するために使われます。

 

しかし、骨格筋に貯蔵されている全ATP量はわずかで、歩行で数十メートルの移動ができる程度にすぎないので、ジャンプやダッシュであれば1~2秒で消耗してしまいます。

 

そこで、身体はATPを一定に保つように即座にADPをATPに再合成する巧妙な仕組みを持っています。

引用・索引 スポーツ・運動生理学概説

筋線維の種類(遅筋(slow-twitch:ST型)線維と速筋(first-twitch:FT型)線維に選別される)

2014.10.29 | Category: トレーナー,トレーニング,ブログ

1.筋線維の種類

 

人の骨格筋線維は、遅筋(slow-twitch:ST型)線維と速筋(first-twitch:FT型)線維に選別され、FT線維はさらにFTa線維とFTb線維に細分され、また、ST線維はtypeⅠ線維、ST線維はtypeⅡ線維と呼ばれることもあります。

 

2.筋線維の収縮特性

 

①最大短縮速度

 

筋線維の最大短縮速度は、平均値ではFTb>FTa>STの順で高く、ST線維と比較するとFTb線維では約4.1倍、FTa線維では約2.3倍になります。

 

最大短縮速度の決定因子は、ミオシンATPaseの活性(ATPを分解する速度)で、活性が高いものほど短縮速度は高くなります。

 

②等尺性最大張力

 

単位面積当たりの等尺性最大張力は、ST線維よりFT線維のほうが高くなりますが、最大短縮速度にみられるほどの違いはなく、また、FTa線維とFTb線維間には、違いは見られません。

 

FT線維のほうが発揮張力が大きいのは、ST線維より筋原線維がよく発達しているからになります。

 

③疲労耐性

 

人の筋線維を3,000回収縮させたときの収縮後の張力は、FTb線維ではほとんど0になりますが、ST線維では数%、FTa線維では10数%程度しか低下しません。

 

FTbでは、極めて疲労しやすく(疲労耐性が極めて低い)線維であるといえます。

 

疲労耐性はミトコンドリアの量(ミトコンドリアの数と個々のミトコンドリアの大きさ)によって変化し、その量はST>FTa>FTb線維の順で高くなります。

 

3.筋線維組成

 

ほとんどの骨格筋では、上記の3種類のタイプの線維が混在しており、それぞれの割合のことを筋線維組成(muscle fiber composition)といいます。

 

筋線維組成は同一の固体内であっても筋によりことなり、また、解剖学的に同一の筋でも個体差がみられる場合が多くなります。

 

※歩いたり、走ったりする際に主動筋である外側広筋や腓腹筋では、ST線維の占める割合は平均では約50%ですが、ST線維やFT線維が極端に(80%)多く含んでいるものもみられ、例外として、下肢のヒラメ筋では、誰もがST線維を多く含んでいます。

引用・索引 スポーツ・運動生理学概説

運動学習と神経基盤(運動の学習は運動神経系だけではなく視覚、聴覚、体性感覚などの知覚と認知も関与し、動きが未熟である場合、感覚からの情報がないと上達しない)

2014.10.28 | Category: トレーニング

運動学習

脳と運動学習

動作や運動の技能(スキル)獲得は、スポーツや体育の場面では効率的に身体を動かす技術を身につけることや、細やかな手仕事を行う場面では正確で繊細な動きを身につけることを意味します。

 

しかし、技能の獲得とは、体幹や手足の動きの効率性ばかりではなく、脳や神経系からの側面で考えると、「シナプスとシナプスの選択的つながりの強化(Consolidation)」を示しています。

 

神経筋トレーニング(γ運動神経機械受容器の閾値を下げることにより、主動筋組織の感度を高め、予測できない力に素早く反応できるようになる) (さらに…)

筋線維の構造(筋鞘、筋原線維(アクチン・ミオシン)、筋小胞体、ミトコンドリア)

2014.10.27 | Category: トレーニング

1.筋鞘

 

筋線維を直接覆う膜を筋鞘(sarcolemma)といい、基底膜(basement membrane)と形質膜(plasma membrane)の二重構造になっています。

 

形質膜(細胞膜)はリン脂質からできており、膜を貫通するように、ナトリウム(Na+)チャンネル、カリウム(K+)チャンネル、Na+-K+ポンプが存在し、これらのチャンネルあるいはポンプは、静止電位や活動電位を発生させる役割を担っています。

 

形質膜のところどころに、膜が陥没して筋線維の内部に落ち込んだ管があり、この管は横行小管(T管)と呼ばれ、活動電位を筋細胞内部へと伝える作用を持ちます。

 

筋原線維

 

筋原線維(myofibril)は筋収縮を起こす器官で、収縮要素とも呼ばれ、直径は1~2μmで、1本の筋線維中には、数百本から数千本の筋原線維が含まれています。

 

筋原線維を電子顕微鏡で拡大してみると黒い部分(A帯)と白い部分(I帯)が交互に並んでいることが観察されます。

 

直径15μmのミオシンフィラメント(myosin filament)は、多数のミオシン分子からできており、ミオシン分子は膨らんだ部分(ミオシン頭部)と細長いロッドからできており、ロッドが絡み合いフィラメントを形成しています。

 

ミオシン頭部は、アクチンフィラメントに向かって突き出るうように配置されており、条件が揃うと強く結合することができます。

 

直径6μmのアクチンフィラメント(actin filament)の主成分は、球体のG-アクチンで、G-アクチンは数珠のように連なり、螺旋状に重合しフィラメントを形成しています。

 

フィラメントの溝に当たる部位には繊維上のトロポミオシン(tropomyosin)が存在し、さらに、トロポミオシンには、トロポニン(troponin)が結合しています。

 

※トロポニンは、T、C、Iの3成分からなる複合体になります。

 

アクチンフィラメントは、Z線から左右に突き出るように伸びており、Z線からZ線までを筋節(サルコメア:sarcomere)と呼び、筋節線維の基本構造になっています。

 

筋小胞体

 

筋原線維を覆っている袋状の膜器官を筋小胞体(sarcoplasmic reticulum:SR)といいます。

 

SRは機能と構造から2つの部位に分けることができ、両端のやや膨らんだ部位を終末槽と、終末槽と終末槽に挟まれた部位を縦走管といいます。

 

T管に隣接している終末槽には、カルシウム(Ca2+)放出チャンネルがあり、一方、縦走管にはCa2+ポンプとして機能するSRCa2+-ATPaseが多数存在します。

 

SRはCa2+の貯蔵庫で、通常、筋細胞内に存在するほとんどのCa2+は、SRの袋の中(内腔)にあり、SRの外側(細胞質)のCa2+濃度は極めて低く保たれています。

 

4.ミトコンドリア

 

アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)は、細胞が直接用いることができる唯一のエネルギー源になります。

 

長さ約2μmのミトコンドリア(mitochondria)では、酸素を用いた反応を通して、アデノシン二リン酸(adenosine diphoshate:ADP)と無機リン酸(inorganic phosphate:Pi)からATPが産生されます。

 

ミトコンドリアは、外膜と内膜の二重の膜でできており、内膜は極めて密に折りたたまれています。

 

内膜の内部はマトリックス(何かが生み出される場所を意味)と呼ばれ、ATP産生に必要な多くの酵素が含まれています。

 

一連の反応により、水素イオン(H+)は内膜と外膜の間の空間に蓄積され、そのため外部に出ようとする圧力が生じます。

 

内膜にはATP合成酵素があり、この圧力によってH+が酵素を貫通する際に発生するエネルギーを用いてATPが合成されます。

 

引用・索引 スポーツ・運動生理学概説

筋肉の種類と構造(骨格筋は骨に付着し身体を動かす、心筋は血液ポンプとして作用する、平滑筋は内臓や血管を形作り、消化機能や血液の運搬を補助する)

2014.10.26 | Category: トレーナー

1.筋肉とは

 

筋肉は骨格筋(skeletal muscle)、心筋(cardiac muscle)、平滑筋(smooth muscle)の3種類に分けることができます。

 

生体内で担う機能は、骨格筋は骨に付着し身体を動かすこと、心筋は血液ポンプとして作用すること、平滑筋は内臓や血管を形作り、消化機能や血液の運搬を補助することになります。

 

また、骨格筋は自分の意志で動かすことができるために随意筋、一方、心筋と平滑筋はそれができないために不随意筋とも呼ばれています。

 

人は全身に430数個の骨格筋が存在し、体重の40%を占めています。

 

 

骨格筋の構造

 

骨格筋の両端には腱があり、腱は骨に付着しています。

 

多くの筋肉では、中央付近が最も太く、この部位を筋腹といい、また、両端の細い部分のうち身体の中心に近いほうは筋頭、遠いほうは筋尾と呼ばれ、筋肉にはいろいろな形をしたものがあり、形状に応じて名前がつけられています。

 

 

筋肉は細長い細胞が束になりできており、この細胞のことを筋線維(muscle fiber)といいます。

 

筋線維の直径は平均で約50μm、長さはさまざまでほんの数mmのものから15cmに及ぶものまであり、筋線維はそれぞれ平行に規則正しく並んでいます。

 

※これは結合組織からできている筋膜によって束ねられているためです。

 

最も外に位置する外筋周膜(epimysium)は筋全体を覆ってり、筋の内部は数十本の筋線維がひとくくりになっており、これを覆う筋膜が内筋周膜(perimysium)になります。

 

内筋周膜で束ねられた固まりを筋束と呼び、さらに、1本1本の筋線維は、筋内膜(endomysium)に覆われています。

 

引用・索引 スポーツ・運動生理学概説

運動単位(眼球の外眼筋などは小さな運動単位から成り立ち、あまり細かく調整する必要のない筋には、大きな運動単位(一本の運動ニューロンで多数の筋線維を支配する)がある)

2014.10.25 | Category: トレーニング

運動単位

 

一本の運動ニューロンは数本から、かなりの本数の筋線維に接続します。

 

この運動ニューロンと筋線維の組み合わせを「運動単位(Motor Unit)」といい、運動を制御する単位を表します。

 

細かく調節される筋(眼球の外眼筋など)は小さな運動単位から成り立ち、あまり細かく調整する必要のない筋には、大きな運動単位(一本の運動ニューロンで多数の筋線維を支配する)があります。

 

運動単位の種類

 

運動単位の種類にはS(slow)型、FR(first resistance)型、FF(first fitigue)型があり、運動ニューロンと筋線維の発火特性により区別されています。

 

①S型運動単位

 

S型運動単位は、数が最も多く最大の張力を発揮するまでに約100msecかかる遅発性収縮を起こし、1時間の反復収縮後でもほとんど張力の低下は見られません。

 

S型運動単位の運動ニューロンは小さく、伝達速度が遅く刺激から収縮までの潜時が長く、それは長い後過分極を生じるからで、そのため、最大発火頻度が低くなり完全な強縮は低い周波数頻度(15~20Hz)で達成されます。

 

S型運動単位を構成する筋線維はエネルギー代謝の面からタイプⅠ線維(遅筋線維)といい、ミトコンドリアが豊富にあり有酸素代謝に有利でクレブス回路における酵素活性が高く、そのためタイプⅠ線維の運動単位は長時間低い張力を発揮できます。

 

※タイプⅠ線維は体幹や脚の重力に対抗する筋や姿勢筋に多く分布し、これらの筋線維は多くのミオグロビン量を含んでいるので赤筋とも呼ばれています。

 

②FR型運動単位

 

FR運動単位は、収縮速度が速く、比較的長く収縮し続ける抗疲労性の運動単位であり、約5分間中程度の張力を持続できます。

 

FR型運動単位は代謝の面からタイプⅡa線維といい、タイプⅠとⅡbの間の中間にあたります。

 

③FF型運動単位

 

FF型運動単位は速疲労性の運動単位で最も大きな張力を発揮できますが、その持続時間は30秒ほどになります。

 

FF型運動単位は代謝の面からタイプⅡb線維と呼ばれ伝導速度がかなり速く、40~60Hzの高い頻度で発火し、短時間で強縮を生じます。

 

FRおよびFF型運動単位を構成する筋線維はS型運動単位の筋線維よりミトコンドリアの数が少なく、無酸素代謝に有利で解糖系における酵素活性が高く、タイプⅡ線維(速筋線維)の運動単位は大きな張力を発揮できますが、短時間しか持続できません。

 

※タイプⅡ線維は四肢に多く分布しており、これらは少なくミオグロビン量しか含んでいないので白筋とも呼ばれています。

引用・索引 スポーツ・運動生理学概説

競技中の水分摂取の重要性(一般的に体重の3%の水分が失われると体温上昇とともに循環器(心臓や血管系〉の能力が低下する)

2014.10.24 | Category: トレーニング

スポーツと水分

 

かつて、日本のスポーツ界には練習中に水を飲むことを極端に制限する風潮がありました。

 

のどの渇きを我慢することで精神力を鍛えるという目的があったわけですが、これは生理学的の常識から見て明らかに意味のないことになり、現在では積極的に水分摂取をしなければならないという認識が広まるようになりました。

 

運動中の水分摂取を極端に制限すると、特に暑熱環境では体内の水分量の減少により体温調節能力が損なわれ、その結果、体温の上昇が進んで熱中症などを引き起こす危険性が高まり、熱中症予防の観点からの水分摂取は、その重要性を常に再認識するべきです。

 

また、試合や練習を効率よく行う上でも水分摂取は重要になり、一般的に体重の3%の水分が失われると、運動能力が低下するといわれ、暑い日には1時間で2~3㍑の汗が出ることもあります。

 

※体重60kgの選手なら、3%は1.8kgですので、この時点ですでにパフォーマンスは落ちています。

 

水分と循環器系

 

大量の汗をかいて体内の水分が失われると、体温上昇とともに循環器(心臓や血管系〉の能力が低下し、心拍数が上昇します。

 

また、上昇した体表面の温度を下げるために血液が体表面に集まり、その結果、筋肉や臓器への血流量が減少してしまい、運動能力が低下します。

 

筋肉への血流量の低下は筋活動のエネルギー源である酸素や糖質の補給効率低下を招き、乳酸値も早く上昇し疲労をもたらします。

 

 

これらの悪循環は、全て体内から水分が失われて起こることで、運動中に水分摂取を行えば、状況の悪化をかなり抑えることができます。

 

水分摂取の具体的な方法は、そのときの気温や湿度にもよりますが、少しづつ何度にも分けて飲む方法が推奨され、運動前にまずコップ1杯(200ml)の水を飲み、そして運動中は15~20分おきにコップ1杯の水を飲みます。

 

試合中であればタイムアウトや攻守交代でゲームが止まった時、練習中なら定期的に「ウォーターブレイク」を設けて飲むようにすると良いとされています。

 

※1回に飲む量をコップ1杯としているのは、一度に大量の水を飲むと胃腸に血液が集中し筋活動が妨げられる可能性があるのと、一時的に体重が重くなり動きが鈍くなる可能性があるからです。

 

こまめに飲むことを推奨するもう一つの理由は、実際にのどの渇きを感じる前に飲む必要があるからで、私達が渇きを感じた時には、すでにかなりの水分が失われていますので、こまめに飲むことで、水分損失による生理学的現象に対して先手を打つ必要があるからです。

 

水分と体温

 

水分摂取の第一の目的は発汗によって失った水分を補給することですが、体温を下げるという二次的な目的もあります。

 

特に暑い時期の試合や練習ではこれが必要ですので積極的に利用するべきです。

 

その場合は低い温度の水(0~5℃)が有効とされており、飲むのと同時に、筋肉(腕や脚)に水をかけて冷却することで、体温上昇を少しでも抑えるテクニックがマラソンやサッカーで利用され、日本代表チームなどが暑い環境での国際試合で成果をあげています。

 

補給する水分の中身ですが、通常の場合は真水で十分ですが、発汗量が多い場合はスポーツドリンク等で水分と一緒に体内からミネラル分(ナトリウム、クロム、マグネシウム、カリウム、カルシウムなど)が同時にかなり失われますので、それらを補給することも考えなくてはなりません。

引用・索引 勝ちに行くスポーツ生理学

 

スポーツ選手の食事内容とタイミング(疲労回復を促進するための食事として、運動後30分以内に高炭水化物を摂ることが望ましい)

2014.10.23 | Category: トレーナー

食事と摂取のタイミング

 

スポーツ栄養学では、食事の内容もさることながら、摂取するタイミングについての重要性が指摘されています。

 

これは、アメリカで行われた研究で、運動後のグルコース摂取と筋内のグリコーゲンの状態を調べたものになります。

 

筋肉内のグリコーゲンの回復状態は、いわゆる疲労回復の状態を反映します。

 

運動によって低下したグリコーゲンレベルが回復していれば、次に運動するときにより大きな筋出力を長い時間にわたって発揮することができるからです。

 

研究では、食事の内容として炭水化物を多く含んだもの、タイミングとして運動後2時間経ってから摂取した場合はグリコーゲンの回復具合は思わしくありません。

 

この研究結果をもとに、疲労回復を促進するための食事としては、運動後なるべく早めに、できれば、30分以内に高炭水化物を摂ることが望ましいといわれるようになりました。

 

実際の摂取タイミング

 

実際のスポーツ選手の食生活を考えてみると、合宿生活がこの理論を最も当てはめやすいことがわかります。

 

練習場が隣接している合宿所であれば、練習後、シャワーを浴びて、すぐに食卓につくことが可能であり、30分以内の食事は比較的簡単に実現します。

 

※強いチームが例外なく合宿生活をしていたりすることは栄養学的にも理にかなうということになります。

 

合宿生活には、食後の休養も取りやすい環境になり、トレーニング・栄養・休養の3要素がすべて隣接した中で過不足なくとれるのは環境として申し分ありません。

 

ところが、現実を考えると、年間を通して合宿生活ができる選手は限られています。

 

むしろ、大半の選手は練習後30分以内に食卓につくことは難しく、通学時間の長い高校生や大学生はなおさらです。

 

その場合は、部活動の練習後、軽めに炭水化物で小腹を満たすことが推奨され、おにぎりを1~2個、あるいはバナナを1~2本食べ、そして帰宅後に筋肉の材料となるタンパク質を十分に含む夕食を摂るようにします。

 

こうすれば、たとえ通学に2時間かかったとしても、疲労回復に不利な条件を緩和することができます。

 

おにぎりやバナナが難しいようであれば、飴や炭水化物の入ったスポーツドリンクでもかまいません。

引用・索引 勝ちに行くスポーツ生理学

筋損傷の要因(筋肉の伸張性筋収縮によりポッピングサルコメアとカルパインが筋の損傷に関与する)

2014.10.22 | Category: トレーナー

ポッピングサルコメア(popping sarcomere)

 

短縮性筋収縮や等尺性筋収縮に比べて、伸張性筋収縮後では甚大な筋損傷がみられる場合が多くなります。

 

上記は大腿直筋の筋損傷部位の超音波診断画像になります。

 

周辺部の筋節(サルコメア)は正常ですが、中央部のものだけはその構造に乱れが見られます。

 

伸張性筋収縮を行うと、筋節には外部からの力と自分自身が縮もうとする力の2つの力が働き、極めて大きな機械的ストレスがかかり、多数ある筋節の機械的な強度は必ずしも同じではなく、中には他と比べて弱い筋節があり、伸張性筋収縮の際にこれらが耐えられなくなる時に破壊されると考えられています。

これを「ポッピングサルコメア(popping sarcomere)説」と呼ばれています。

 

カルパイン

 

短縮性筋収縮と比べ伸張性筋収縮では、収縮後の張力の低下の程度が大きいばかりではなく、その回復に長時間を要します。

 

伸張性筋収縮後にみられる長期に渡る張力の低下には、カルパインが関与していると考えられており、タンパク分解作用を持つカルパイン(calpain)は、Ca2+濃度の上昇によって活性化される酵素になります。

 

伸張性筋収縮を行うと、細胞外部からCa2+が流入したり、筋小胞体のCa2+取り込み・保持機能が低下したりして、細胞内のCa2+濃度が高まり、この酵素が活性化されます。

 

カルパインによっていったんタンパクが分解されると、それに代わる新たなものが合成され、適切な位置に組み込まれなければならないために機能の回復に時間がかかります。

引用・索引 スポーツ・運動生理学概説


アールズメソッド シニアマッサージ&ストレッチ 脳梗塞後遺症や関節拘縮に即使える実践マニュアル!

高強度トレーニングによる筋疲労の原因(乳酸性アシドーシス・クレアチンリン酸減少・無機リン酸蓄積)

2014.10.21 | Category: トレーニング

筋疲労と筋損傷

 

筋に収縮を繰り返し負荷すると、筋の収縮機能(発揮する張力あるいはパワーなど)はやがて低下します。

 

このときの筋細胞内を観察すると、機能の低下に伴い器官の損傷が起こる場合と起こらない場合があります。

 

前者を筋損傷(muscle damage)、後者を筋疲労(muscle fatigue)と呼ばれています。

 

高強度運動による疲労

a)乳酸性アシドーシス

筋細胞内のPHは、安静時でほぼ7.1に保たれていますが、数分以内で疲労困憊にいたる運動を行うと6.5前後にまで低下します。

 

これは、解糖系(glycolytic pathway)の代謝が亢進し、乳酸(lactic acid)が産生されるためです(乳酸は、水溶液中ではHを放出するため)。

 

乳酸の蓄積によって、PHが低下する現象を乳酸性アシドーシス(lactic acidosis)といい、長い間、筋疲労の主因と考えられてきましたが、最近の研究により生理的条件に近い温度下(30℃以上)ではPHの低下は、筋の収縮機能にほとんど影響がでないことが明らかになりました。

 

b)クレアチニンリン酸の減少

運動強度が極めて高く、30秒以内で疲労困憊となってしまうような運動では、アデノシン三リン酸(ATP)はクレアチンリン酸(phospphocreatine:PCr)から供給されます。

 

このため、運動中はPCrは減少し、ほぼ枯渇状態となり、すると、十分なATPが供給されなくなり、筋疲労が起こります。

 

c)無機リン酸の蓄積

 

安静時では、筋細胞内の無機リン酸(Pi)の濃度は1~3mMですが、強度の高い運動を行うと最大30mM程度にまで高まります。

 

これは、クレアチンキナーゼ(creatine kinase:CK)が関与した反応において、Piが過剰に産生されるためになります。

 

高強度運動による筋疲労では、Piの蓄積に起因する次のような現象が、筋張力低下の主な原因となります。

 

①Piの濃度が高まるとその一部は、高濃度のCa2+が存在する筋小胞体(SR)内腔へと流入する。

 

②PiはCa2+と結合しやすい性質を持っており、内腔においてPi-Ca2+結合物が形成される。

 

③結合物となったCa2+は、細胞質へと放出されない。

 

④そのため、SR Ca2+放出チャンネルが開口しても、細胞質のCa2+濃度が十分に高まらず、張力の低下が起こる(筋原線維の収縮力はCa2+濃度に制御されている)

 

※Piが蓄積しないCK欠損動物では収縮を繰り返しても収縮時Ca2+濃度および張力は低下せず、このことは、Piの作用を裏付ける事実になります。

引用・索引 スポーツ・運動生理学概説


女性専用筋トレダイエット “マッスル・ビーナス”

長時間運動による筋疲労の原因(ミトコンドリアの疲労耐性と筋グリコーゲン量減少)

2014.10.20 | Category: トレーニング

ミトコンドリアの量

 

ミトコンドリアでは、酸素を利用してATPが産生され、この反応は酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation)と呼ばれます。

 

長時間の運動では、酸化的リン酸化により需要に応じたATPが供給され続けることが、運動を継続するうえで必須になります。

 

したがって、ミトコンドリアを多く含んでいれば、酸化的リン酸化を介して、より多くのATPを供給できることになります。

 

需要に対してATPの供給が下回ると、無機リン酸(Pi)の蓄積が始まるために筋疲労が起こります。

 

※ST線維(遅筋線維)が高い疲労耐性を有している(疲れにくい)のはミトコンドリアを豊富に含んでいるためです。

 

筋グリコーゲンの減少

 

マラソンのような長時間の運動では、Piの蓄積が起こらなくても筋疲労を生じることがあります。

 

このような運動では、疲労困憊時には、筋に含まれているグリコーゲン(glycogen)は、例外なく枯渇しています。

 

また、運動前の筋グリコーゲン量が多いほど、運動継続時間が長く、これらのことは、筋グリコーゲンの減少が要因であることを示すものになります。

筋グリコーゲンの約80%は細胞内の器官に結合しており、それによって器官の構造は堅固に保持され、安静時では、ジヒドロピリジン受容体(DHPR)やCa2+放出チャンネルにもグリコーゲンが付着しており、その状態でこれらの器官は正常に機能しています。

 

筋グリコーゲンが減少すると筋が疲労するのは、これらの2つの器官に付着しているグリコーゲンが低減すると器官の構造が変化し、DHPRからCa2+放出チャンネルへのシグナル伝達が、十分に行われなくなるためであると考えられています。

引用・索引 スポーツ・運動生理学概説


一人一人の目的・体に合わせた個別のトレーニングメニューを処方する新感覚トレーニング 『Dr.9 (ドクター9)』須賀一柳 (スガカズヤ )

トレーニングと血糖値の関係(低血糖状態でトレーニングをすればするほどグルカゴン分泌により筋肉が落ちていく)

2014.10.19 | Category: トレーニング

トレーニングと食事

アスリートと血糖値

 

走っていて急に下腹部が痛くなる事、誰もが一度や二度はこんな経験をしたことがあるはずです。

 

その時の状況として食事直後の時によくおこり、これは食事と関係があるということになり、食事の直後は、消化吸収の為に胃腸が活発に働きます。

 

胃で細かく分解された食物は、それぞれ分子レベルの栄養素となり腸から血液中に取り込まれ、身体の各部に運ばれ、そのために胃腸には一時的に多くの血液が集められ、消化吸収をスムーズに行おうとします。

 

普段、筋肉に配分されている血液も、この際には胃腸を中心とする内蔵に集められ、これが、昔から「食後の後は激しく動いてはいけない」といわれる理由になります。

 

これに反して、食後すぐに激しい運動をすると、内臓に集中していた血液が腕や脚の筋肉に移動してしまい、内臓は酸素不足になり、中でも脾臓が痙攣を起こしてしまい、これが下腹部が痛くなる現象の正体になります。

 

※消化吸収が妨げられるので運動を中止しろと内蔵が警告をしている状態になります。

 

筋肉での糖質の合成(血糖値が通常レベル以下だと取り込まれない為、インスリンが膵臓から血液中に出ることで筋肉はグルコースを取り込める)

(さらに…)

環境温度と筋の特性(低温では筋の収縮速度は低下するので、収縮速度の大きな速筋線維が低温環境下では運動するには有利になる)

2014.10.18 | Category: トレーナー

環境温度と筋収縮

 

豚を12℃の低温で飼育すると、筋の中の遅筋線維の割合が増えるという報告があります。

 

※増加した体脂肪を効率よくエネルギー源にすることのできる遅筋線維が増えると理屈に合います。

 

逆に、別の研究で、ラットを1日1時間低温(20℃)の水中で遊泳させたところ、高温(30℃)の水中で遊泳させた場合に比べ熱伝導率がはるかに高いので、20℃の水中では激しく運動しても筋温は1℃低下すると考えられます。

 

※低温では筋の収縮速度は低下しますので、収縮速度の大きな速筋線維が低温環境下では運動するには有利になる為です。

 

「生活する温度」「運動するときの温度」

生活する温度と運動する時の温度ではかなり意味が違い、「低温環境下でのトレーニング」は「高所トレーニング」の場合と同様、一時的にあえて悪環境下でトレーニングすることで、より高度な適応を得るという目的で使える可能性もあります。

 

※ウェイトリフティングなどの競技で、寒い国の選手が伝統的に強いことと関係があるのかもしれません。

引用・索引 究極のトレーニング 石井直方


棗田三奈子の『動きの文法 胴体トレーニング』 ~可動域を極限まで広げる方法~ [NM0001]

長距離選手とタンパク質(1時間を超えるような運動を行う場合、エネルギー源として糖質、脂質のほかにタンパク質も利用される)

2014.10.17 | Category: トレーニング

タンパク質摂取の重要性

クアン90

タンパク質は筋肉の主材料ですので、種目を問わずスポーツ選手には最重要といえる栄養素です。

 

大きな筋力やパワーを要する種目の選手のほうが、タンパク質摂取に対する関心も高く積極的に摂取しており、これはまったく理にかなった傾向です。

 

最近は、持久系種目の選手にもタンパク質を摂取させるような研究が多数発表されています。

 

長距離走のパフォーマンス向上のポイント(筋の面積当たりの毛細血管数とミトコンドリア密度を上げ酸素の拡散と利用を促し、1回拍出量と心拍出量を最大限に多くすること)

(さらに…)

ページトップ