競技において運動神経が良いとは?(相反性神経支配がうまく働いている人)
筋肉を収縮させるためには脳からの電気刺激が必要になり、電気刺激を伝えるのは神経系になります。
神経系は大きく分けて中枢神経系と末梢神経系があります。
解剖学用語として「運動神経」と呼ばれているのは、末梢神経の中の「遠心性神経」のことで、脳からの末梢の筋肉に命令を送る神経になります。
しかし、私達が普段「あの子は運動神経が良い」という場合の運動神経は、この解剖学上の遠心性神経の機能のみを指すのではなく、目的とする運動をスムーズに行われることを包括的に表現しています。
感覚神経
運動時には、脳から筋肉へ命令を送るだけでなく、筋肉から脳(および脊髄などの中枢)へ命令を送り出す働きが相互にバランス良く機能しなければなりません。
この後者の働きをする神経を感覚神経(遠心性に対しては求心性神経という)と呼びます。
一連の流れとして、まず、目や耳から何かの刺激が入り、それが感覚神経を通って脳に伝えられ、次に脳から「運動せよ」との命令が運動神経を通り筋肉に伝えられます。
筋肉の中にはその長さを検知する筋紡錘や、張力を感知する腱紡錘といった器官があり、これらが働いて検知した結果が感覚神経を通じて中枢神経系にフィードバックされ、その情報に基づき、中枢では新たな命令を筋肉に送ります。
この繰り返しによって運動が遂行され、一連の神経系の働きがスムーズに行われるか否かが、動作として表現される運動の質に大きな影響を与えます。
運動神経が良いとは?
例としてサッカーのボールを蹴る運動をイメージしてみましょう。
膝を伸ばすときに主動筋となるのは、大腿部の前面にある大腿四頭筋になります。
脳からの命令が大腿四頭筋に届くと、筋肉の中の筋紡錘や腱紡錘が働いて、その時の筋肉の状態を感覚神経を通して脊髄にフィードバックされ、主動筋である大腿四頭筋の収縮をより増幅させるために運動神経を通してその命令を大腿四頭筋に送ります。
さらに、拮抗筋として働くハムストリングス(大腿後面の筋肉)の収縮を抑制するために、命令が送られないようにコントロールします。
ハムストリングスの中では、同じように筋紡錘や腱紡錘が働いて、自らはより抑制的に、大腿四頭筋に対してはより強い収縮が起こるような命令の循環が起こります。
これを「相反性神経支配」と呼びますが、この命令系統がスムーズに行われると、キックがより強く正確になる、つまり、運動の質が高まるということになります。
※脚を振り出す前のデータバックの局面では、両者の筋肉にまったく逆の命令が届きます。
動作が滑らかで、かつダイナミックな人を指して「運動神経が良い」と評価することが多く、運動神経が良い人はこのこの相反性神経支配がうまく働いている人だともいえます。
主動筋の出力を増し、拮抗筋の抑制を促すようなトレーニングがとても重要になります。
引用・索引 勝ちに行くスポーツ生理学