Blog記事一覧 > 2015 12月の記事一覧
腰痛と運動の反復
一定方向の運動を反復することは、腰痛(LBP)の症状に影響を及ぼします。
運動パターンには症状を悪化させるものも、緩和させるものもあり、後者はクライアントが運動を行うための準備に役立ちます。
クライアントが症状が緩和したと気づく運動方向は、クライアントにとって「好ましい運動方向(Directional Preference)」であり、LBPの改善に効果的であることが示唆されます。
一方で、運動に伴いLBPが増悪し、痛みが脚部への下方へ放散する現象は「末梢化(Peripheralization)」と呼ばれ、これは症状の悪化を意味するため、末梢化を起こす運動は避けるべきとされています。
健全な体幹強化のルーティンでは60レップを超えないことが推奨される(椎間板は血管が少なく、代謝産物の運搬レベルも低く、他の骨格組織に比べリモデリングが遅れるため、回復により多くの時間が必要である)
無酸素性エネルギー代謝量
従来、無酸素性エネルギー代謝量は、酸素負債(Oxygen Deficit)により定量評価されてきました。
酸素負債とは、運動後に長く続く安静時よりも高い酸素摂取量になります。
一方、酸素借とは、最大下の同一運動強度で運動を行っている場合に、運動初期に観察される定常状態(運動開始数分後に観察される酸素摂取量が定量となる現象で、その酸素摂取量が当該運動の酸素摂取量を示しており、これが当該運動強度の酸素需要量となる)よりも低い酸素摂取量と酸素需要量との差になります。
高強度インターバルトレーニングとリン酸ローディングによる持久的能力の向上(最大酸素摂取量(VO2max)、無酸素性閾値、疲労困憊に至るまでの時間の改善)
混合アプローチ
第2のパワー向上法は、混合アプローチを用いることですが、それは力-速度曲線の様々な領域を目標に定め、種々のトレーニングエクササイズを異なる負荷で遂行することになります。
例えば、プライオメトリックトレーニングを異なる負荷で遂行することであり、効果的なプライオメトリックのエクササイズである無負荷のジャンプスクワットを0~30%1RMの負荷で行えば、力-速度関係の小さな力と高速の領域におけるパワーの向上に目標を定めることになります。
それとは反対に、中~高負荷(70~90%1RM)を使ってスクワットを行うことは、力-速度曲線の大きな力の領域でのパワーの向上に目標を定めることになります。
また、床からまたはハングポジションでのパワークリーンで、1RMの70~90%の間の負荷を用いれば、広範囲な力-速度パラメータの向上をもたらす可能性があります。
パワー発揮を最大化するための混合法(バックスクワットでは、パワーの向上は負荷が30~70%1RMの間で起こり、筋力の向上のためには高負荷(>75%1RM)を用いる必要がある)
股関節形成術後の有酸素性能力
股関節形成術(HA)を受けた多くのクライアントは長年にわたる身体障害と活動レベルの低下を経験しているために、有酸素性能力も低下しています。
したがって、これらのクライアントが有酸素性能力と持久力を回復し、生活の質を向上させることができるように、心臓血管系の強化を狙ったエクササイズを実施することが有益とされています。
特異性の原理に従うと、特に、歩行を中心とするトレーニングは、HA後のクライアントの正常な歩行運動を回復し機能的能力を復活させる上で適しています。
股関節形成術後リハビリテーション後のエクササイズ(身体の正中線を超えて股関節の内旋や内転を同時に行うことは避け、外旋筋群の強化は股関節の安定性とパフォーマンスにとって重要である)
ピリオダイゼーションとは
ピリオダイゼーションとは、予め決められた時点における競技パフォーマンスの最適化をもたらすように、系列的かつ統合的な方法で、トレーニング介入を倫理的かつ体系的に組み立てることになります。
パフォーマンスの向上という主要な目的を達成する極めて重要なことは、生理学的適応とパフォーマンス適応とを促進する一方で、疲労を管理できるように、トレーニングプログラムに計画的なバリエーションをもたせることです。
スクワットエクササイズ
これまで、スクワットエクササイズにおける筋の活動パターンと動作メカニズムを調べた研究は、ほとんどがバックスクワット(BSq)を対象としていました。
しかし、BSqとフロントスクワット(FSq)の運動学的要素と筋活動パターンを比較した研究もわずかにあり、Gullettらの近年の研究では、スクワット経験者15名(男性9名、女性6名)を対象に、BSqとFSqにおける膝関節の筋活動および負荷パターンの潜在的な違いについて調べました。
被験者は、スクワットの各バリエーションの試行を1回3レップで2回、それぞれ70%1RMの同じ相対負荷を用いて行ないました。
興味深いことに、BSqではFSqより約19kg挙上したにもかかわらず、両エクササイズ間で大腿四頭筋、ハムストリング、脊柱起立筋の筋活動に有意差はみられませんでした。
パワー発揮を最大化するための混合法(バックスクワットでは、パワーの向上は負荷が30~70%1RMの間で起こり、筋力の向上のためには高負荷(>75%1RM)を用いる必要がある)
ウェイトリフティングとパワーリフティングの特徴
ウェイトリフティングとパワーリフティングは混同されやすく、これらのエクササイズはパフォーマンスの特徴が異なっていますが、目標、すなわち、できる限り多くの重量を挙上することは共通しています。
パワーリフターはデッドリフトとバックスクワット、そしてベンチプレスの3種目を行ないます。 相対的に高負荷で行うこと、また運動のバイオメカニクスを前提とすると、通常は、パワーリフティングの開始直後に最大フォースの発揮が観察されます。
対照的にウェイトリフティングでは、負荷スペクトルの全体にわたり高速での最大フォースを発揮することが必要になります。
プライオメトリックトレーニングの重要性(ストレッチ・ショートニング・サイクルは神経、筋の機能改善に伴う爆発的パワーの向上により、多くの種目の競技パフォーマンスに影響を与える) (さらに…)
股関節形成術(HA)後に続くリハビリテーション後
股関節形成術(HA)後に続くリハビリテーション後の段階において、下半身の多関節運動は、レジスタンストレーニングを主体としたお客のためのエクササイズプログラムの基盤となります。
スクワットやランジおよびレッグプレスなどのエクササイズは、(関節可動域に関する注意が守られているという前提で)身体機能にとって重要な大筋群に重点を置いた、安全で効果的な選択になります。
股関節形成術後の脱臼の50%は術後最初の3ヶ月間に起こる(股関節の臀筋群と外旋筋の不安定性、屈曲、内転、内旋などの動作が多いお客ほど脱臼しやすい)
肩関節置換術
肩関節全置換術(関節形成術)は、保存療法では効果がのみられない、関節炎症状を呈するお客のための有効な介入方法になります。
従来実施されている関節全置換術が有効であることは明らかにされていますが、修復できないローテーターカフの断裂のあるお客には適用できません。
逆肩関節全置換術(rTSA:Reverse Total Shoulder Arthroplasty)は、特に関節炎が進行したお客やローテーターカフに修復不能な損傷のあるお客のために考案された複雑な手術法になります。
肩の不安定性に対するウェイトトレーニング(肩関節外転外旋を行う「ハイファイブ」の姿勢は肩関節包前部に負荷を与えるために、肩前部の過弛緩(過剰な動き)を引き起こし、不安定性をもたらす)
筋力、パワー発揮の方法
単に筋力またはパワーの向上に焦点を合わせただけの一元的なトレーニング法では、パワーや筋力を最大に増大はできず、総合的な競技パフォーマンス能力を最大限に高めることもできません。
したがって、パワー発揮能力の最大化には混合アプローチが推奨されます。
至適負荷と筋力およびパワーの向上(高負荷のトレーニング(>80%1RM)は、中程度から低負荷の介入(<30%1RM)に比べ、負荷状況下(>60%1RM)において、より優れたパワー発揮をもたらす)
脊椎と背部痛
脊椎の機能と損傷メカニズムに関する背部障害が、特に何かしら共通の「きっかけとなる出来事」を原因として起こっていると考えた際、通常、疫学的方法で統計が取られますが、その統計では、累積的な外傷による起因の度合が無視されます。
累積的な要因が関与しているということは、椎間板ヘルニアの形成過程のデータが証明しています。
脊椎の運動力学の日内変化が及ぼす影響(起床後わずか30分で、椎間板は1日の高さの54%を失い、1時間以内に水分の90%が失われる)
HMBが回復を促進し、長距離走後の筋損傷を軽減する
持久系アスリートにおけるHMB(ロイシンから合成されるHMBには、細胞内での筋たんぱく質合成を制御する働きがあります)の効果に関する研究は多くはありませんが、その結果はかなり有望です。
Knitterらの研究において、HMBが回復を促進し、長距離走後の筋損傷を軽減することが明らかになりました。
また、Vukovichらの研究では、エリート自転車競技選手において、2週間のHMB摂取によりVO2ピークまで時間が延長したこと(8%)、さらに、血中乳酸濃度蓄積開始点の%VO2maxが向上したことも示されました。
持久系アスリートに関する筋の回復には、3~6g(38~76mg/kg/日)が有益とされています。
βヒドロキシβメチルブチレートと無酸素性運動(ロイシンの代謝産物であるHMBは骨格筋の損傷修復のスピードを速め、レジスタンストレーニング後の筋力やパワーおよび筋肥大を増大させる)
椎間板の体積
睡眠中は椎間板にかかる負荷は減少し、より多くの液体が吸収され、椎間板の体積は増加します。
その後、液体は脊椎への負荷がかかるにつれて1日を通じて排出され、早朝の椎間板内の圧力は就寝前より240%高く、親水性により、またクリープ(負荷による変形の増大)がないことにより、曲げ応力は椎間板では300%、神経弓の靭帯では80%増加しています。
時間の経過とともに椎間板は膨らみ、圧縮時の固さを増大させ、屈曲に対する弾力性と柔軟性が高まり、親水性が増し、椎間板脱出のリスクが減少します。
しかし、起床後わずか30分で、椎間板は1日の高さの54%を失い、1時間以内に水分の90%が失われます。
そのため脊椎屈曲エクササイズは、起床後少なくとも1時間は避けるべきとされ、慎重に考えるなら、脊椎の屈曲を含むエクササイズは、起床後最低2時間以上経ってから行うほうが良いとされています。
脊椎屈曲エクササイズと柔軟性(脊椎屈曲エクササイズが矢状面での脊椎の可動性を高め、向上した柔軟性は、結合組織の強度の増加、神経筋コーディネーションを改善する)
パワー発揮をもたらす負荷
至適負荷とは、特異的な動作に対して最大のパワー発揮をもたらす負荷のことになります。
至適負荷はパワー発揮能力を向上させる効果的な刺激であることが示唆されていますが、この主張を裏付ける研究は極めて少なく、逆に、至適負荷でのトレーニングは、パワー発揮能力の向上を図る上で、高重量トレーニングや混合負荷モデルよりも効果的であるといえないと示唆する研究もあります。
力の立ち上がり速度は力-時間曲線の傾きから決定される(50~250ミリ秒の短縮時間は、ジャンプ、スプリント、方向転換などの素早い動きに関連する)
脊椎椎間板への力学的負荷
遺伝的要因が椎間板の変性に非常に大きな影響を及ぼすため、脊椎の回復能力を超えない範囲で軟部組織を強化する適応をもたらすために十分な量、強度、頻度を正確に知ることは困難であり、組織への力学的負荷には健康な椎間板の維持を容易にする「安全な範囲」が存在するとの理論があります。
力学的負荷が脊椎の圧迫に関係することのエビデンスは、この理論を支持しています。
クランチによる筋肥大と伸張性筋収縮(伸張性エクササイズは筋のより大きな損傷を伴い、乳酸、水素イオン、無機リン酸などの代謝産物が増加することにより、筋肥大が誘発される)