前十字靭帯損傷からの復帰
前十字靭帯(ACL)は大腿骨外側上顆から脛骨顆間隆起に向けて走行します。
前内側線維と後外側線維の2本の線維からなり、長さは約30~50mm、直径は約7~10mmになり、スポーツによる断裂が一番多い靭帯になります。
受傷起点に注目すると、ランニングのストップ動作、方向転換時、ジャンプと着地の動作で発生しています。
注目すべきは女性のスポーツ選手で発生率が男性の2~8倍も高いことも知られています。
※下肢アライメント、顆間窩の形状、関節弛緩性、ホルモンの影響、靭帯の大きさ、体重などがその理由として考えられています。
前十字靭帯損傷では運動中に、膝崩れ(giving way)という現象が起こります。
膝関節の機能解剖学
膝関節は大腿骨と脛骨及び腓骨をつなぐ関節であり、いわゆる蝶番関節であるが、横への動きや回旋の動きもわずかでありますが可能になります。
膝関節の動きは4つの靭帯(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯)と2つの半月によりコントロールされています。
膝蓋骨は大腿四頭筋-膝蓋腱-下腿をつなぐ膝伸展機構の要になり大腿骨との間に膝蓋大腿関節を構成しています。
評価
関節可動域のチェックとともに、膝関節の不安定性のチェックも重要です。
前十字靭帯損傷に対するラックマンテスト、内側側副靭帯損傷に対する外反ストレステストなどは十分に習得しておくべき徒手検査法です。
また、膝蓋骨の位置やゆるみの程度も把握しておく必要があります。
膝の使いすぎによる障害を評価する際には、膝を中心とした下肢全体のアライメントのチェックが重要です。
前十字靭帯損傷の診断項目
1 | ノンコンタクトでの受傷機序の観察 |
---|---|
2 | 受傷時のpop音 |
3 | 関節の腫脹・血腫 |
4 | X線で骨折線の確認 |
5 | 前方引き出しテスト |
6 | 偽前方引き出し徴候に注意(PCL) |
7 | Lachmanテスト |
8 | pivot shift test(N-test、Jerk test) |
9 | 後方引き出しテスト |
10 | 内・外反ストレステスト |
11 | McMurray テスト |
施術法
施術法としては初期には自然治癒を期待できる場合もありますが、慢性例では靭帯再建術が行われます。
手術法は現状では膝蓋腱や半腱様筋、薄筋の腱を用いる手術が用いられます。
膝前十字靭帯損傷のリハビリテーションは競技復帰までに6ヶ月から8ヶ月を要する場合が多いです。
手術による膝の安定確保はもちろんですが、関節可動域の確保、大腿筋力の回復も図らなくてはなりません。
リハビリテーションに要する時間が長いために心肺機能の回復や技術練習に要する時間も長いため、選手は自分の描く動きのイメージと実際の動きとのギャップに悩むことも非常に多いです。
そのような選手には身体的なサポートのみならず精神的なサポートも必要になります。
アプローチのポイント
最も重視しないといけないポイントは、疼痛や評価上のデータが示す情報だけでなく、動作における機能性の評価を踏まえた上で、復帰の判断をしていくところにあります。
※一般的にサイベックスマシンの測定値におけるハムストリングス/大腿四頭筋比、左右差や体重支持指数(WBI)によるデータが復帰の条件として利用されています。
内側広筋、外側広筋の機能性評価
大腿広筋群(特に内側広筋、外側広筋)はその走行上、膝関節屈曲に内外反を伴うような回旋動作に対し、抑制を加えていると考えられており、特に内側広筋においては前十字靭帯のストレス肢位である膝関節外反に対する制御を担い、外側広筋が大腿筋膜張筋と膝関節内反を制御する事を考えると前十字靭帯へのストレス軽減だけでなく、動作許容範囲の拡大を促すことにつながります。
そのため、内側広筋、外側広筋の機能低下は膝関節内外反、回旋ストレスが加わる動作を困難にします。
※例として、加速した状態から側方へ方向転換する動作において、曲線的に減速しながら側方へ方向転換するのではなく身体を後傾させて小刻みに足を踏み変えることで減速し、前方へのスピードが収まったあとで側方への方向転換を行います。
一歩の接地時間を短く、かつ前後左右への直線的な動作を行うことで膝関節に生じる内・外反および回旋のストレスを回避させ、特に片足で踏み込みながら側方への方向転換が必要とされる曲線的な動作のように、膝関節に回旋ストレスが生じる動作においてこの代償動作がより躊躇に表れます。
この状態で復帰させた場合、相手の動きに合わせた無意識な対応で代償動作が必要とされた場合や疲労が蓄積され、意識下での動きの制御が困難となった際に、膝関節への強い内・外反および、回旋ストレスに対応できずに再受傷の危険性が高まります。
前十字靭帯(ACL)損傷と女性選手(解剖学的因子:顆間切痕幅と膝関節の弛緩、ACL伸張強度や月経状態などの成長因子とバイオメカニクス的因子:動作パターン、筋力不均衡、筋活動パターン)
ランディングとカッティングの女子アスリートパターンと前十字靭帯損傷(着地中のアライメント不全は、膝関節を過伸展させながら脛骨を内旋させ膝関節の最大屈曲角を10.5°小さくする)
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